Henkipedia

アンサイクロペディア、エンサイクロペディア等に並ぶことを目指す、Wikipediaの歴史系パロディサイト。扱うのは主に鎌倉時代、たまに室町~江戸時代も。主に"偏諱"に着目して、鎌倉幕府御家人の世代や烏帽子親(名前の1字を与えた人物)の推定を行い論ずる。あくまで素人の意見であるから、参考程度に見ていただければと思う。

大掾高幹

大掾 高幹(だいじょう たかもと、1310年頃?~1380年頃?)は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての武将。桓武平氏より分かれた大掾氏嫡流にあたる多気氏の当主で、多気高幹(たけ ー)とも呼ばれる。通称は十郎。
 

 

世代と烏帽子親の推定

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実名「」に着目すると「幹」は大掾氏の通字であるから、「」が烏帽子親からの一字拝領と考えられるが、同時期に現れる同族同名の真壁について得宗北条から偏諱を受けたとする見解*1を参考にすれば、同様に高時から1字を賜ったものと判断される。

 

これを裏付けるために、『尊卑分脈』等の系図を参考にして、世代の推定を行ってみたいと思う。次の図に着目していただきたい。

 

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ここで重要なのが先祖からの代数である。桓武天皇平高望までの生年(一部諸説あり)を見れば分かるように親子間では相応の年齢差がある筈であり、例えばある人物の孫(3世の孫)同士であれば従兄弟関係となるが、さほど世代は変わらないことが多いだろう。上図でも例えば、平貞盛8世の孫にあたる北条時政平重盛が、奇しくも共に保延4(1138)年生まれである*2従って代数は世代の推定にあたって一つの目安になると言えよう

このような観点から、同じ代数同士の人物を並べる形でまとめたものが上の図である。厳密には北条高時多気高幹で1代のずれがあるが、途中の親子間の年齢差の関係でそうなることも十分あり得よう。

先祖を遡っても、多気義幹が現れるのは、時政や重盛の活動期とほぼ重なっているし、義幹の跡を継いだ資幹の息子・多気幹は(根拠が弱いが)北条泰時(初名:時)に同じく源頼朝偏諱を受けた可能性が考えられる。高幹の祖父・幹も北条氏の通字「時」の使用が許されており、得宗専制が強まる北条宗執権期にその一字を受けたのではないか。

元徳2(1330)年創建の清涼寺、応安7(1374)年創建の照光寺は、いずれも大掾高幹を開基とすると伝えられ*3時が存命の間に幹は「高」の偏諱を許されていたと考えて良いだろう。 

高時が元服したのは延慶2(1309)年、その2年後の父・貞時の逝去に伴って得宗家督を継ぎ、1316~1326年の間14代執権の座にあった*4。高幹の元服はこの間に行われたと推定される。 

 

史料における高幹

鎌倉幕府滅亡に際しては高時らと運命を共にせず、その後は足利尊氏に従ったようである。「常陸大掾系図*5、『常陸三家譜』*6、『系図纂要*7によると法名は「浄永(じょうえい)」であったといい、以下に示す通り南北朝時代の史料に大掾入道浄永の名が確認できる。幕府滅亡から数年の間に、無官で「十郎」と名乗ったまま出家したようであり、20~30代と若年での剃髪であったと推測される。

 

【史料1】建武5(1338=暦応元)年8月日付発給者:三浦高継「税所虎鬼丸(幹)軍忠状」(『税所文書』:「惣領大掾十郎入道浄永*8

【史料2】『関城繹史』:「七月……平高幹叛降賊、大掾系図、桜雲記、廿六日、小田志筑官軍、攻高幹府中石岡城、戦于市河、志筑下河邊氏族、」*9

 

【史料3】康永3(1344)年正月日付発給者:高師冬「税所幹軍忠状」2通(『税所文書』:「惣領常陸大掾入道浄永*10、もう一方にも「…浄永存知上者、…」*11とあり。

 

【史料4】観応3(1352)年10月日付「鹿島烟田時幹軍忠状」(『烟田文書』):花押を据える発給者が高幹(浄永)か。*12

 

【史料5】貞治3(1364)年9月10日付「沙弥浄□〔浄永〕披露状」(『烟田文書』)高幹(浄永)関東管領に同族・烟田時幹の軍忠を賞するよう請う*13

 

【史料6『鹿島文書』所収・貞治4(1365)年付書状5点*14:2月2日付 足利基氏書状案の宛名に「常陸大掾入道殿」、以後4点書状の冒頭端裏書に「貞治五三二(※各々年月日の数字)常陸大掾入道被進之」とあり。尚、11月15日付書状は高幹(浄永)自らが発給したもので、「沙弥浄永」の署名と花押が据えられている。

 

【史料7】永和3(1377)年10月6日付「関東管領上杉憲春奉書」(『円覚寺文書』):宛名に「常陸大掾入道殿」*15 

 

 

(参考ページ)

 大掾高幹(だいじょう たかもと)とは - コトバンク

 多気高幹(たけ たかもと)とは - コトバンク

 大掾氏系図

 

脚注